7弦ギターの大物たちと、その逸話

(1) バルテールの新記録

Yamndu & Valter

バルテール・シルバ(Valter Silva)、通称バルテール・7コルダス(Valter 7 Cordas)は、私の知っている内でも、最も才能のある伴奏者で、即興の対旋律の演奏者です。
彼の見事な演奏とギターの音量を最大限に引き出す能力にはいつも憧れを持っていました。

70年代、リオ在住ショーロ・ミュージシャンのたまり場であったソバッコ・デ・コブラ(Sovaco de Cobra)で、ここのホーダに欠かさず出ていた彼は信じがたい記録を打ち立てています。

Raphael

ある日曜日の夕方、ホーダが終わりに近づき、それぞれ帰り支度を始めていると、バルテールが「今日最後の1曲を弾こう」と言い出して演奏が再開されました。

その頃、ハファエル(Raphael Rabello)はまだ14才の少年で、大好きなバルテールをいつもすぐそばで見ていました。
すると、ハファエルの目の前で、バルテールの"ソ"の弦が切れてしまいました。
ハファエルは、恰もそういうことが起こると知っていたかの如く、立ちどころにストックの弦を彼に渡しました。

間もなくして、早いフレーズの最中にまたしても"ソ"の弦が切れてしまいました。

Amadeus

ハファエルは、映画の「アマデウス」のモーツアルトさながらにキャッキャと笑って、もう1本、予備の弦を渡しました。
そしてまた1本また1本と弦が切れ続け、その間、バルテールは笑いを噛み殺した顰めっ面で演奏を続け、その横でハファエルは真っ赤になって、モーツアルトみたいに笑っていました。
結局、6本の"ソ"の弦と、1本の"レ"の弦が切れ、ハファエルが袋の底をかき回しながら、やっとの思いで笑いをこらえて、「もう無い!」と叫び、この日のホーダの最後の1曲は、中途で終らざるを得ませんでした。

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(2) サドルまでも(バルテール 2)



Conjunto Chapeu de Palha

何週間か後、ソバッコのホーダはそのままベッチーニョ(Betinho)の家に流れていきました。
コンジュント・シャペウ・デ・パーリャ(Conjunto Chapeu de Palha)の仲間が揃って、バルテールがフビーニョ(Rubinho)の伴奏をし、ゼ・ダ・ベーリャ(Ze da Velha)がトランペットを演奏していました。

演奏が盛り上がる中、バルテールが対旋律をわざとものすごい大きな音で弾き出すと、今度は弦が切れる代わりにサドルがもげてしまいました。

これが私が目撃した壊し屋のもうひとつの記録です。

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