片山叔美のエッセイ

私のサウダージ、アデミルジ・フォンセーカ

<文:片山叔美>




(15) Yoshimiの結婚相手さがし

Ademilde Fonseca




2回目のブラジル旅行(2011年)も終わろうとしていた頃だった。
今回は一か月の滞在。
あっという間だ。
アデミルジやその兄弟、娘、孫たちも揃って、私がすぐまたブラジルに戻って来れるようにと、いろいろ意見を出し合った。
戻るためにはお金をなんとかしなければならない、という話になり…

アデミルジの弟は知人に頼んでヨシミの仕事を探してもらうと言う。
片や、孫は、Luciano Huckという人が司会する人気テレビ番組の出演を狙おう、と提案。これは、何か成し遂げたいことのある出演者が審査員に囲まれながら審査され、OKなら大金を得るという番組で、娘のエイマーもそうだそうだと同調して討議は熱を帯び…
途中からもう話の内容が理解できない(笑)。

まあ、どれもあまり期待できそうにないことは分かる。

Ademilde Fonseca & Márcio Gomes

挙句、「ああ、ヨシミはマルシオと結婚すれば良かったのに!」
と、アデミルジが言い出した。
マルシオとは、2004年の1回目の渡伯でアデミルジを訪ねた際に何かと手伝ってくれた歌手のマルシオである。

「あ~あ、もうマルシオは結婚しちゃったし~。あの時、結婚してればねえ…」
と、アデミルジの同居人、コンスエロまで嘆息する始末。

えっ、「あの時」って何ですか!? そんな「時」は無かったですよ、残念ながら!!
っていうか、情熱の国ブラジルで、ずっと一緒に居た男性とそんなふうにならなかったのは、私の失態なのか!?

しかしマルシオも自由を愛するとか生涯独身主義とか言ってたくせに、存外早く結婚したなぁ。
そういえば、丁度あの頃、アデミルジに電話した時も、やっぱり傍らでコンスエロが「どーするの、マルシオが結婚しちゃったじゃない!!」って大騒ぎしてたっけ。
もしかしてイチ推しの嫁ぎ先だったのかなぁ???

まぁね、何にしても、みんなで私のために話し合ってくれてたわけで…有難いことでした。

ある日の午後、何のイベントだったか、エイマーがコパカバーナのとある施設で歌うというので、アデミルジとコンスエロと私の3人で出かけて行った。
会場はなんだか教室みたいな所に椅子を並べて…という感じ。エイマーの他に歌手が二人いて。
エイマーは『O Negócio é Amar』を歌ってたっけなぁ…。

Eymar Fonseca

そのライブの後で、私の帰国の日も間近だし、アデミルジとコンスエロになにか御馳走しようかなと思っていたら、ちょうど隣にちょっと高級そうで評判のカフェがあった。
この店のメニューのなにがしがマラヴィーリャ(すばらしい)などと、早速二人のお喋りが聞こえてくる。
…はいはい、ではここに入りましょう(笑)。

そこで何を注文したかは忘れたけど、こんな会話があったことを覚えている。

アデミルジがガルソン(ウェイター)を引き留め、話しかける。
「ねえ、ミニーノ(「少年」の意)、あなた、独身?」
「そうだよ、セニョーラ(「ご婦人」の意)、ぼくは独身さ。」
「ねぇ、このヨシミと結婚しない? 日本人よ。あなた、どこに住んでいるの?」
「あっちのモーロ(丘)だよ」
「あら、そう、家賃はいくらなの?」
「100レアウス※」
(※当時1レアウ=50円くらい)

というようなやりとりだったと思う。
なるほど、ブラジルでは住んでいる場所で経済力が分かるのだな。

それにしても家賃100レアウス(うろ覚えだけど)は、あまりに安い。
リオで比較的安全で便利な場所に1人で住むとしたら、たしか当時7~8万円くらいは最低でも出したほうがいいって言われていたと思う。
ということはつまり、普通のアパートを想像してはいけない。
そもそも、彼はモーロに住んでいるという。
そう、モーロとは「丘、ファヴェーラ」、一般に裕福でない人たちが住む場所。
もっとも最近はずいぶんと治安が良くなって、そこそこ安全に暮らせるモーロも増えたと聞くが。
外国人がいっぱい住んでいるファヴェーラもあるそうだ。

「ヨシミ、彼と結婚するなんてどう!?」
って言いながら楽しそうに笑っていたアデミルジ。
もちろん、本気で勧めているわけではない。
「ヨシミがここで誰か恋人でも見つけて結婚しちゃえば、ずっとブラジルに居られるのに…」という彼女の気持ちの表れだったのだ。

最後の最後までがんばったけど(!?)結婚してくれる人は見つからなかったぁ~!


2014 02 03
写真は著者より