片山叔美のエッセイ

私のサウダージ、アデミルジ・フォンセーカ


<文:片山叔美>




(17) 大切な人─『Pedacinhos do Céu』(ペダシーニョス・ド・セウ)



Yoshimi



アデミルジが天空の住人になってからはや2年。
彼女の家族にもようやく自然な笑顔が戻ってきた様子だ。懐かしさに込み上げてくる気持ちは今尚あるけれど、みんなそれぞれ歩き出した。

アデミルジは幸せ。人生を全うしたのだから、と大方の人は慰めてくれたけど、家族は納得できなかった。91歳という年齢が信じ難いほどに彼女は元気だったし、アデミルジのいない生活を誰ひとり想像していなかっただろう。前の晩までテレビの収録のために歌い、普通に食事をして、テレビを見て…本当に突然の出来事だったのだ。

Admilde

人はよく、死ぬ時はコロっといきたいって言うけど、予想外にコロっといかれてしまうと、残された者は狼狽する。
長く患って死ぬ場合、本人は勿論、家族も相当辛いが、残される覚悟というものは多少なりともできるだろう。
でも長引き過ぎれば、面倒を見る家族は心配と看病疲れで消耗して人道に外れるようなことも頭をよぎるかも知れない。そんな葛藤を与えてしまうのも罪なことだ。
いずれにせよ、こればかりは人為でどうにもなることではなく、最良の方向に事態が進むようただひたすら願うしかないのだ。

さて、前回の章で私のCDのタイトルのことを書いたが、そのCDの3曲目に収録した楽曲について追記したいことがある。

その曲は「Pedacinhos do Céu」

実は日本での1回目の録音で音質が悪過ぎて、いったん却下した曲だ。その後、7弦ギターの高田泰久氏にお願いしてアレンジも演奏も全てやっていただき、このアルバムの中でも特に緻密な録音となった。ブラジル人ミュージシャンに、このアレンジは誰がやったの?とよく聞かれるほどだ。

ライブでこの楽曲を歌う際、私は「『ペダシーニョス・ド・セウ』」は、日本語で『空のかけら』です。」と説明した。

そして内心で思っていた。(なんか「かけら」って言葉が悪いな…。)

歌詞の内容を見ても「かけら」なんてものじゃない、とても大切な人への深い愛を歌っている。なんと安易な直訳邦題をつけてしまったのだろう。せめて「パーツ」とか(…?)、かけがえの無いものというニュアンスのある言葉が欲しかった。

実際、Pedacinhos do Céu(Pedaço do Ceu)には、自分の全てとも言えるほど必要で無くてはならないもの、という意味があるそうだ。
作曲家のヴァルジール・アゼヴェードは、自分の娘のためにこの曲を作ったという話を聞いたことがある。

思えば、アデミルジが存在しなければ、私はショーロを歌わなかったかも知れない。
私にとっての『Pedacinhos do Céu』その一つはアデミルジなんだな。
そしてショーロの歌にとっての『Pedacinhos do Céu』もまたアデミルジ、ということになるんだな。

(ネットを見てたらPedacinhos do céuという名のデザートもあった。よほど美味しいのだろう。是非、食べてみないと!)

しかし、探究するべきことはまだまだ沢山あるなぁ。
曲名一つとっても、色々なことを発見する。
そして歌詞が作られた当時の時代背景なども知ると一層ロマンを感じることができる。
ブラジルの音楽を通してこれからも沢山の興味深い物事に触れ、ショーロを歌うためのバックボーンを固めていきたいと思う。
そのためにもブラジルの文化について、もっと詳しく知ってみたい。いや、知るべきだろう。

Admilde & Yoshimi

アデミルジと最後に交わした言葉。
(彼女のアパルタメントのエレベーターで)

「もどってくるでしょう?」

「うん」

「それならいいわ」

「チャウ」

「チャウ」

私の旅はまだ終わりにはできないのです……ねぇ、待ってるのでしょう?アデミルジ。
もうちょっと、歌とポルトガル語と、それからブラジル文化の勉強をしてからでOK!?

片山叔美

2014 03 27




【皆様へ】



1年以上にわたり、アデミルジと私の想い出エッセイを最後までお読みいただいて有難うございました。
このような機会を与えて下さった fonfon の貝塚ご夫妻に感謝します。お陰様で、アデミルジとの想い出にじっくりと浸り、文字に残すことができました。
どうして私がショーロをトラディッショナルなやり方で歌うのか、読んで下さった方々にご理解いただけたら幸せです。今後もっと色々な思いを込めてショーロを歌っていきます。

そのためにも目下、ブラジルの文化について学んでいるところです。
近いうちに、そういった話題も皆様にお届けできればと思っています。

ということで『近日新装開店、ただいま準備中』!


Um abraço para Admilde, fonfon





ライブ情報


Homenagem à Rainha do Chorinho
"Ademilde Fonseca"

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~ショーロの女王、アデミルジへの想いを伝えたくて~


2014年4月13日(日)
OPEN:18:00
START:19:00

2回ステージ(入替無し)
MC:2500円

出演
片山叔美(歌)&Banda Doçura Lá(バンダ・ドスウララ)

Banda Doçura Láメンバー
石河麗 フルート
田崎陽子 カヴァキーニョ
高田泰久 7弦ギター
西村誠 パンデイロ

場所:アウボラーダ
TEL:0422-20-2797(予約受付中)
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-32-9-B1