片山叔美のエッセイ (5)

私のサウダージ、アデミルジ・フォンセーカ






<文:片山叔美>


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アデミルジとの交流


アデミルジの嫌いな場所…

今月でアデミルジは92歳、そしてこの世を去ってから一年。
あっという間に過ぎ去った一年だった。

2011年、私がブラジルを訪問する際に、カルメン・ミランダつながりで友人になったサンパウロの方とカルメンのお墓詣りに行く約束をしていた。そこはリオのボタフォゴにある「サン・ジョアン・バチスタ」という墓地である。
ブラジル人には、日本人の様に何かにつけてお墓に行くような習慣は無いらしい。どちらかというと恐怖感?などもあったりするようだ。
そのことを知っていたので、アデミルジに内緒でお墓詣りをしようとしていたのだが、誰かがバラしてしまった…

「ヨシミ、本当に行くの?」

あの時、アデミルジはとても嫌そうな顔をしたなぁ(そりゃそうですね)。

ブラジルでは土葬が一般的で、サン・ジョアン・バチスタ墓地も然りである。
と言っても、土の中に「埋めている」わけではなかった。

その墓地の眺めにはかなり驚かされた。
十字架か石碑のようなものが土の上に立っている様をイメージしていた私が、そこで目にしたのは、人よりだいぶ大きめなサイズの石の棺が墓地一面に並んでいるという光景だったのだ。
友人に「やっぱり…この石の棺の中にいる…?」
と聞くと、「そうだ」と言う。

石棺の蓋を開ければ中にもう一回り小さな棺があって、そこに故人がいらっしゃるということだ。
まだ亡くなって間もない方ならば、ほとんどそのまま原形を留めて。
その事実をより近距離に感じ取れることが切なく、衝撃でもあった。

その墓地には著名なミュージシャンが数多く眠っている。
カルメン・ミランダをはじめ、
フランシスコ・アルヴェス、
アリ・バホーゾ、
アントニオ・カルロス・ジョビン、
クララ・ヌネス……

何度もここを訪れている友人は、結構広い墓地のどの辺にどの有名人の棺があるか熟知していて、彼らがどんな最期を迎えたかという話まで聞かせてくれた。

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そして2012年3月末。
アデミルジもまた、この場所に運ばれ、永遠の眠りについてしまった。
それはこのサン・ジョアン・バチスタ墓地に行きさえすれば、再びアデミルジの1m以内に近づけるということでもあるのだ。

2012年3月27日(ブラジル時間)。
アデミルジは23時頃にキッチンで倒れてしまったらしい。
同居の女性が発見したときには既に遅かった。
前日には「SARAU」という長寿TV番組の収録のためにハイヒールを履いてスタジオへ行き、幸せそうに歌って喋っていたのである。

…ねぇ、皆さん…
91歳といっても、こんなにも元気だったんですよ。
訃報を聞いても信じられず、暫くしてから深呼吸してアデミルジの自宅へ電話しました。
もちろん本人は出ません。
受話器の向こうで孫が号泣していました。
まだ信じられなくて、アデミルジの弟の家にも電話しました。
冷静に話してくれました。

インターネットで検索すると、Wikipediaはいつの間にか上書きされ、(1921-2012)となっていました。「歌姫よ、永遠に!」という亡くなった歌手を追悼するブログにもアップされ、ニュースの記事の他、YOUTUBEでもどんどん関連動画がアップされていました。

何日か経って、アデミルジの最後の音楽活動となった、その最後の収録が数回に分けて放送されました。
YOUTUBEにアップして下さった方がいて見ることは可能でしたが、やっぱり辛くてほとんど直視できませんでした。
その後、友人から「その番組でよしみの話をしているよ」と知らされ。
本当に恐ろしかったですが、見ないわけにもいかず…
見ました。

その映像はダウンロードしましたが、その後は一切見ていません。
もうちょっと月日が必要です。

でも、間違いなく素敵な人生だったと思うんです。
亡くなる前日まで歌っていたのですから…

嗚呼!!さうだーじ!!アデミルジ!!!




<おまけ>




2013 03 14

注:記事内の写真は著者から提供されました。