片山叔美のエッセイ

私のサウダージ、アデミルジ・フォンセーカ


<文:片山叔美>




(9) 2011年、2度目のブラジル訪問 ~ライバル出現!?




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フツーの生活を地道に送っている心清き市民(私は郡民だけど!)がブラジルに1ヵ月間滞在するとなると、けっこう大変なことになる。
帰ってきてからの自分の未来のことはあえて考えず、勇気を奮い起こしてブラジル行くとなったら、それなりの身辺整理もしなくてはいけない。
潔く心を決め「さあ動け」って勢いで、ビザを取りにブラジル領事館へ。
Hawaianasのビーチサンダルで乗り込んだ足元をジロジロ見られたけれど、折りしも傍らに、赤ちゃんの顔より大きな乳輪を出して堂々とおっぱいをあげている女性が。そうだ、ひるむな、よしみ。人がどう思おうと、気にしている場合ではないぞ!

一方で、今まで自分の素性を明かしていなかった人には、「私は近々消えるが、ブラジルへ行く。実はショーロ歌手なのだ」などと、手土産持参で告白しに行く必要もあった。

まあ、そんなこんなで2011年9月、私は再びブラジルへ旅立った。
アデミルジはもう90歳。急げ!よしみ。
グズグズしている暇は本当になかった。
今思えば、出発が半年遅れていたら、もう二度とアデミルジに会うことができなかったのだから。私には運もあるらしい。

そして、およそ7年ぶりの再会。
アデミルジは元気ではあったけど、加齢のためか少し小さくなっていた。

で、その隣りに、ちっちゃい男性がいた。
おい、君は誰だ?

彼の名は、ロドルフォ・アマラウ。
やたらニコニコしている。いや、作り笑いか?
アデミルジの昔からのファンで、既に14歳くらいの時にアデミルジの家を訪問していたという。
手には自分のCDのコピーを持っていた。
彼は歌手。なんとショーロを歌うそうだ。

確かにそのCDにはショーロが何曲が入っていたと思う。
私も頂いたのだが、どこかに紛失してしまった(ごめんなさい!)。

彼はアデミルジとず~~~っと喋っている。
と言うより、一人で喋り続けているような…。
とにかく、奇妙な動きをしながら、ひたすら喋っている。
見ているだけでも面白い男だ。
何となくクネクネ。年齢不詳。
もしかして私より少し若いのかな、という感じもする。
アデミルジの故郷、ナタール(Rio Grande do Norte)に在住だが、アデミルジに会うためにリオへ旅行に来たらしい。
彼はアデミルジと私に、自分がTV出演した際のビデオを見せてくれた。
確かに、ショーロを歌っている、そんなに速くはないけど。
やっぱり奇妙な動きだ。視線の飛ばし方といい…。

次の日、私はネットカフェで彼のことを調べてみた。
YOUTUBEを検索し、彼を追って進んでいくと、ちょっと風変わりな動画が…。

Maysa(セクシー系でサンバ・カンソンの女王と呼ばれるマイーザ)に似ているけど、そんなはずはない。
不自然なロングのかつらにボディコンの服を着てソファーに足を組んで座っている。
一瞬目を疑ったが、それは、彼、ロドルフォ・アマラウが、Maysaに扮し(完全になりきって)インタビューを受けている動画だった。

後日、アデミルジと友人の歌手、マルシオにその動画のことを報告し、一緒に視聴した。(なぜか現在はその画像、YOUTUBEに出てこない…)

彼はショーロ歌手ではあるけれど、どうやら芸の本性はこっちなのだ。
その奇妙な動きの謎が解けたのだった。
さらに後日、「僕のタイプの人(男性)を見かけたら、ヨシミに内緒で教えてあげる、うふ♡」みたいことも言われた。

彼はいい人には違いなかった。
アデミルジと3人で出かけることがよくあった。
タクシーに乗って、降りる時に私がお金を出そうとすると、アデミルジが目で合図をする。食事の後のお会計の時もだ。
レディファーストの国、ブラジルにおいて、「ゲイ」ではあっても「紳士」である彼のプライドを重んじれば、払ってもらうのが正解ということらしい。

こうして、彼のお陰か、アデミルジのお陰か、たびたび旅費が浮いたのだった。
ありがとう、ロドルフォ!
私のステキなライバル!!

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その頃、SEM CENSURAという番組からアデミルジに出演の依頼が来た。
毎回ゲストを迎えて色々な話をしていくこの番組に、アデミルジに敬意を表してショーロの歌のCDをリリースしたという女性歌手と一緒に出演してほしいとの事。
なんと、また一人、新しいライバルが出現したのだ。
本当ならアデミルジは私とロドルフォもその番組に連れて行きたかったのだが、収録日は、私の帰国後。ロドルフォもナタールの自宅に帰ってしまっている。

後にその放送は、YOUTUBEに番組が丸ごとアップされていた。
リージアというその歌手が一生懸命、自分のリリースしたCDについて喋り、ショーロの歌が広まっていくのは素晴らしい、とか言いかけた時、アデミルジが突然言い放った。

「とても興味深い歌手が他にいるの。ああ、今日は皆さんに話さなければいけないことがある。私のショーロのレパートリーを歌う、ロドルフォ・アマラウ。そして、ヨシミ カタヤマ。彼女は日本人。ほとんど私、アデミルジと同じように歌う…」
「日本人ですって!?」と司会者。
「アパニェイ・チ・カヴァキーニョだってチコチコ・ノ・フバだって歌えるし、カルメン・ミランダにオマージュを捧げるショーもやったし」

てな感じで、リージアの話の隙を狙って無理やり私やロドルフォの話をつっこんできたのだった。
実に弟子思い(?)なアデミルジ。
内情を知るものにとって、この時の映像はかなり滑稽なものであったと思う。

ありがとう、アデミルジ!!!


2013 08 08

注:記事内の写真は著者から提供されました。