片山叔美のエッセイ

「ブラジル浪漫暦話」

片山叔美 私はショーロを歌う


<文:片山叔美>




(5)「Mês do Cachorro Louco~8月は狂犬病の月!?」

じゃあく




南半球ブラジルの8月は冬。
もちろん、日本みたいな厳しい冬にはなりませんが、何となーく静かで沈んだ月のようですよ。
そして調べてみると、8月は『Mês do Cachorro Louco』(狂犬病の月)とも呼ばれているのです。
愛玩動物の飼い主たちは、8月になるとそれが合図のように自分のペットに予防接種などを受けさせることが多いとか。

まだペットという感覚がなく、路上を徘徊する犬が多かった頃。
8月は女ワンコの発情期に当たるらしく、男ワンコ達は興奮しすぎてオス同士で喧嘩をしたり、はたまた人に噛みついたり…。そうやって犬の間に病気が蔓延、噛まれて感染する人も出ました。
そんなことがあって、8月は『Mês do Cachorro Louco』と呼ばれるようになったそうですが、実はもっと奥深い理由もあるのです。

思い出してみてください。

1961年8月13日のブランディング門。この日まで門の下には東西ベルリンを行きかう車や人が通っており東ドイツ国民の流失が続いていたが、この日開始されたベルリンの壁建設により門は通行禁止となり周囲は無人地帯となった。

1914年8月1日、第1次世界大戦が欧州で勃発。
1934年8月2日、ヒットラーが総統になる。
1945年8月6日、9日、広島、長崎の原子爆弾投下。
1961年8月13日、ドイツが東西に分断される。

等々、なぜか大きな事件が8月に多い…?

ブラジルでは一般的に、8月は邪悪なエネルギーが漂っている月、不吉なことが起こる月と考えられているのです。
ちなみにブラジル人が挙げる自国の事件としても

1943年8月27日、ブラジルの船が海軍の飛行機と衝突。サンパウロの司祭らを含む18人が死亡、負傷者多数。
1954年8月24日、ブラジル大統領ヴァルガスが自殺。
1958年、リオデジャネイロの西地区、デオドーロで大爆発。72時間以上も燃え続ける。
近年では、
2003年8月22日ブラジル宇宙機関のVLS-1(VLS-1 V03)ロケットがマラニョン州 のアルカンタラ射場で爆発。

まあ、実際はどの月も大きな事件があるとは思いますが、8月は特にブラジル人の記憶に刻まれる出来事が多いようです。
個人的に、私が想起するのは…

1930年代のサンバの女王、カルメン・ミランダが46歳の若さで亡くなったのが1955年8月5日。
魔の月に取りつかれてしまったのでしょうか。

とはいえ、何か嫌な事が起こるかも、なんて怯えるのは禁物。
不安のエネルギーは不運を寄せ付けてしまいます。いつも以上にポジティブに過ごしましょう!


追記:


カルメン・ミランダの舞台衣装

8月4日、私の友人、Doni Sacramentoが亡くなりました。
彼が個人的に立ち上げたカルメン・ミランダのホームページは、世界中のカルメンファンたちの交流の場になっていました。
私のリオ滞在中に、サンパウロから出向いてカルメン・ミランダのお墓へ案内してくれたり、カルメン博物館で私の誕生日のためのサプライズを用意してくれたりして、帰国後も友人として交流が続いていました。最愛のカルメンと1日しか違わない命日になりました。

こちらが彼の作ったホームページです。
「Doniのサイトは素晴らしい!!」と讃えると決まって「ぼくのじゃない、カルメンのサイトなんだよ」と言うような方でした。是非、ご覧になって下さい。本当に素敵なサイトです。

7月31日、天才マルチ弦楽器奏者、Zé Menezes(ゼ・メネーゼス)が亡くなりました。1921年生まれ、92歳。
私のCDの中の4曲、演奏していただきました。
そのときのお話もこのエッセイで触れています。

この場をお借りして、Doni Sacramento とZé Menezes、そしてやはり少し前に亡くなった音楽家ÂNGELA SUAREZ。
彼らの魂が安らかでありますよう、お祈りいたします。

2014 8 13
写真は著者より