片山叔美のエッセイ

「ブラジル浪漫暦話」

<文:片山叔美>




(8)「ブラジルのお盆」





私にとって、蒸し暑い夏のさなか、蚊を気にしながらお墓参りするというのがお盆ですが、皆さんはお盆にどんなイメージをお持ちでしょう? 
お盆にはあの世のおじいちゃん、おばあちゃん、ご先祖様たちがこの世に戻って来る、だからお墓まで会いに行くのよ、と小さい頃に教えられました。

何人ものブラジル人から、お墓には怖いイメージがあるので滅多に行くことはない、と聞いていたのですが、ブラジルにも亡くなった人に会うためにお墓に行く特別な日があるのです。

それが11月2日、Dia de Finados(故人の日)と言われる祭日です。

前日にお墓へ行き、掃除をしたり、お花を飾ったり準備をします。そして当日の朝は教会のミサに参加した後、あらためてお墓に向かいます。
多くの墓地には、大きな十字架がそびえ立っている所があり、そこは遠く離れた別の墓地に眠っている故人のために祈る場所なのだそうです。人々はそれぞれのロウソクに火を灯し、並べていきます。ものすごい数のロウソクが燃える中、故人への思いを込めて祈るのです。
お墓参りを終えると、集まって来た親戚共々、皆で食事を楽しみながら故人の想い出を語り合います。

ところで。
墓地に飾られたたくさんの花はその後…持ち去られて売られてしまいます。燃え残ったロウソクもお金に変わるようです。
でもそれもまた人が生きていくためだと皆承知していて、さほど不謹慎なこととも思わないみたいです。

私はカルメン・ミランダに<会う>ために、リオのサン・ジョアン・バチスタ墓地に行ってきました。
その日は10月の平日で他に訪問者もなく、墓守がのんびりと掃除をしていました。
お墓の近くに花屋もちゃんとありまして、お花を買いましたが、菊の花もあったのがちょっと意外でした。

ブラジルでお年寄りに囲まれて過ごしていた頃、死後の世界のことがよく話題に上りました。「人は死んだら何も無くなるというのは本当なのか、それともちゃんと空から家族を見守ることができるのか」といった内容でした。願わくは、あの世で自由に先人と会え、この世とも自在に行き来して家族や友人を見守りたいものですね。

実は私、そういうことはきっとできるって信じているのですよ。なにしろ自分自身が不思議なめぐり合わせを何度も経験していますから…。

今年8月、この連載でも触れましたが、一人のブラジルの友人を亡くしました。
世界で一番カルメン・ミランダを愛していたその人は、私が日本で彼女の歌を歌っていることを大変喜んでくれて、ずっと歌い続けて欲しいと言っていました。
そして突然の彼の死。あまりにも大きな衝撃でしたが、それから1か月を経たある日。

ディズニー映画のブラジル音楽を取り上げる企画を考えたミュージシャンの方から私に連絡がありました。カルメン・ミランダの妹である、アウロラ・ミランダがディズニーの映画に出演していたということで。
嬉しいことに、私のカルメン好きをご存知だったのですね。その時、すぐに脳裏に浮かんだのは優しかったあの彼のいたずらっぽい笑顔でした。
「よしみ、僕はカルメンもアウロラも大好き。二人のために歌ってよ!喜ぶから。」
実は私をカルメンのお墓参りに連れて行ってくれたのは、その彼だったのです。カルメンの隣には妹のアウロラのお墓もあり、彼女にもお花を供えて祈りました。

この墓地には今や、ショーロの女王、アデミルジ・フォンセーカも眠っています。

もうなんだか空から色んな人に見られているような気がして、もっと真面目に深く理解して歌わないとバチがあたるんじゃないかと、必死に勉強しているこの頃なのです。(笑)

2014年11月17日