年を歴た鰐の話

いつの時代もヒーローは覆面姿だ。
月光仮面に然り、鞍馬天狗に然り、仮面ライダーに然りである。
僕だって風呂敷を頭に被り背中に剣をさして窓から飛び降りたことはある。
戦う時だけ覆面着用!
巨大な悪の組織に戦うには、戦っていない時の(休憩中の)匿名性が重要な武器なのだ!
ヒーローの覆面は現場力を高めるサプリメントみたいな物です。
これは絶対に変わらない普遍性だと思っていた。

僕は毎月一回ラジオの収録に故郷を往復します。
足は高速バスです。
こないだ道路脇の看板が目に留まりました。
「覆面パトカー警戒中」
一瞬、白黒のパトカーが覆面(或は仮面)を付けている姿を思い浮かべました。
「パトカーは普段から目立っているのに更に派手な覆面をするのか!」と。
昆虫や蛸の擬態や軍隊の迷彩服とは異なります。こちらは敵にやられない為の防御的な覆面です。
ところが、覆面パトカーとは「匿名と言う覆面」をしたパトカー(ヒーロー)なのです。
「無」に「無」を重ねて「有」を強力化させています。
攻撃主体なのに相手に気を悟らせない。技を懐に隠した名人芸とも言えましょうか。
ジェームス・ボンドにも似た。(アストンマーチンじゃ目立つか、却って)
(塚原卜伝の鍋の蓋のような…余計に分かり難いか)

年を歴た鰐の話

年を歴た鰐の話

年を歴た鰐の話 レオポール・ショヴォ著 山本夏彦著 昭和16年出版

数千年生きて赤くなった鰐を老大国イギリスの姿だとか、鰐に食われてしまう者どもは共産主義下の人民であるとか、なんでもぶち壊すトンカチざめ(鮫)をアナーキストに比したりしたくなるが訳者本人はショヴォの作品はnon-sensだから物語に使用目的は特に無いはずだと言っている。
知り合いの女性は、これは自分の母親に違いないと断言する。
お腹が空けば、子を飲み込み(物語は曾孫の子鰐を食べる)、惚れていた蛸(同棲していた)を食べ尽くし、それで反省している訳でも無くドーンと家の真ん中に鎮座しているかららしい。
僕は何かを発する恐怖を感じ解釈は止した。(年を歴た鰐は何処にでもいる)

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