ゼキーニャ・デ・ アブレウ
Zequinha de Abreu (José Gomes de Abreu)
1880-1935
ゼキーニャの「チコチコ・ノ・フバ」”Tico-Tico no Fubá”はショーロ最大のヒット曲です。
1952年に製作されたゼキーニャ・デ・アブレウの伝記映画 「チコチコ・ノ・フバ」は彼の故郷サンタ・リッタ・パッサ・クアトロ”Santa Rita de Passa Quatro”（4回渡った聖リッタ）の田舎の風景から始まります。
馬車を操って家に帰る途中とうもろこしの粉をを啄む雀（チコチコ・ノ・フバ）を見つけるシーンから最後にバーで酔っ払って死ぬシーンまで全体にゼキーニャは優しくて気弱そうで、どうしてもその印象から抜けられません。（Adolfo Celi監督、ベラ・クルス配給）
彼はこの小さな町で1880年に生まれ1935年にサンパウロで亡くなります。
サンパウロのペルジゼス地区のパカエンブ・サッカー場の近くのヴェンデル・ヴィキエ公園からカルドーゾ通りに抜ける道がゼキーニャ・デ・アブレウ通りと名付けられています。（これ以外にも全国に5か所ほど見つけました）
2010年のサンタ・ヒッタの人口は約26,000人程度で1880年当時は数千人程度でしょう。サン・パウロから北へアニャンゲイラ街道を220キロ程行ったところにある小さな町です。1860年に地方自治体として認められています。
この奇妙な町の名前の由来はサンタ・リッタの更に北20キロあるサン・シモン(Sao Simon)と言う小さな町から解放奴隷が川を4回渡ってサンタ・リッタ（名が付く前）の地に着いたとの逸話が元になっています。この「4回渡る」と言う言葉に4つの州を巡り布教したサンタ・リッタ・パッサ・クアトロを連想し命名したとのことです。
この小さな町でゼキーニャは薬屋の8人兄弟の長男として生まれました。
10歳の頃にはレキンタ、クラリネット、フルートを吹いていました。
中学はサンパウロに出ます。当時の中心地チラデンテス大通り(AV. Tiradentes)にあるエピスコパル学校(Seminario Episcopal）で学び、卒業後は故郷に戻っています。
18歳で地元の14歳のデュルヴァリーナ・ピレス・ブラジル(Durvalina Pires Brasil)と結婚し市役所の秘書と州の徴税官をしながら楽団を運営していました。
20代の終わり頃、町の駅長の娘のBranca Barreto（ブランカ・バレット）に捧げた曲「ブランカ(Branca)」を作曲しこの曲もまたショーロの古典になりました。
1917年37歳で町のダンスパーティーで「Tico-Tico no Farelo」を発表しましたが、カニョートに31年作曲の同名の曲があるということで「チコチコ・ノ・フバ」に改題されました。
1920年の父の死と共にサンパウロに移り、バー・ビアドット(Bar Viaduto)、喫茶店セレッタ(Confeitaria Seleta）他、サンパウロの中心街ジレイタ通りにあったカーザ・ベートーベンに出入りしている間に有名なヴィターレ兄弟出版社の創立者ヴィセント・ヴィターレと出会い、毎月1曲書くことでの専属契約を結びました。
31年に「チコチコ・ノ・フバ」は指揮ガオ（Maestro Gao）、オーケストラ・コルバズ (Orquestra Colbaz)によりレコード化され大ヒットし40年代までレコードカタログにノミネートされています。映画では自分の曲が流行ったことを知らないように描かれていますが、これは演出ですね。
「リンドイアの午後」 “Tardes de Lindoia”はサンパウロから北東へミナス州境にあるリンドイアの町を歌った曲です。リンドイアは丘陵に囲まれ、清らかな泉があり、古くからサンパウロの上流階級の保養地として有名です。
地元の言い伝えでは、リンドイアに住む誰かが保養中のゼキーニャの所にやって来てこの曲を聞かせたのにレコード化の際にはゼキーニャは自分の名前をクレジットしたとのこと。これも美しい曲です。
35年に死んだゼキーニャは金銭的な欲望は少なく、困っている友人に融通し、言葉少なく、笑みを絶やさなかったと伝えられています。
「チコチコ・ノ・フバ」は44年にアウロラ・ミランダ(Aurora Miranda）の歌でウオルト・ディズニーの 三人の紳士”The Three Caballeros”で歌われ、47年には姉のカルメン・ミランダ出演コパカバーナで世界的な大ヒット曲となりました。
参考：UOL Educacao Biograf compositori brasileiro
Câmara Municipal da Estância Climática de Santa Rita do Passa Quatro
映画 “TICO-TICO no fuba” pela direcao Adolfo Celi,com.Bela Cruz