連載 エッセイ ヴィラ=ロボス



<文 宇野智子>


(2) ヴィラ=ロボスとショーロ



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ヴィラ=ロボスが若い頃からショーロに親しんでいたことは、前回ご紹介しました。
ショーロのリズムや要素をスパイスとしている曲はもっとたくさんあると思いますが、今回は、タイトルや副題に「ショーロ」と付けられた作品をご紹介しましょう。

QUINTETO EM FORMA DE CHOROS

① 《Dobrados (ドブラードス)》
 1909-1912年・・・未出版のため詳細は不明ですが、 ギターのための作品集で3曲目が〈ショラォン〉と題されています。

② 《Suíte Popular Brasileira (ブラジル民謡組曲)》
 1908-1923年・・・ギターのために書かれた全5曲の組曲です。1曲目から4曲目までの副題はショーロのリズムをあらわしていて、5曲目だけが〈ショリーニョ(小さなショーロ)〉となっています。
彼にとってブラジルのポピュラー音楽といえばまずショーロ、だったのでしょう。

③ 《Quinteto em Forma de Choros (ショーロスの形式による五重奏)》
 1928年・・・「ショーロ」からは少し離れ、前衛的な響きも感じさせます。パリでの音楽体験も色濃く出ているようです。

BACHIANAS BRASILEIRAS

④ 《Bachianas Brasileiras No6 (ブラジル風バッハ第6番)》
 1938年・・・フルートとファゴットのためのこの曲は、〈アリア(ショーロ)〉と〈ファンタジア〉という楽曲構成で、〈アリア〉でのフルート長い即興風な旋律は、確かにショーロの香りを感じさせます。

⑤ 《Choros (ショーロス)》
 1920-1929年・・・ショーロと名がついた作品の中で、最もユニークなのはこの連作集でしょう。
この作品集は、ギター独奏が第1番、フルートとクラリネットの重奏が第2番、とコンパクトな作品もありますが、民族楽器を入れたオーケストラと合唱、といった大編成の曲も収められています。

Choros

ショーロとは大きくかけ離れ、一見すると巨大過ぎて近付きにくい印象さえ受けますが、もしかするとこれは「ショーロ変遷の歴史」を描いた彼なりの歴史絵巻なのかもしれません。

というのも、これよりずっと後の作品ではありますが、同じようなコンセプトの作品を挙げることができるからです。それは、ピアソラの《タンゴの歴史》です。
この組曲は、1900年代から現代(1980年代)までの各時代のタンゴのスタイルを取り入れており、ピアソラの発信する新たなタンゴで締めくくられます。
当初、ピアソラの音楽はタンゴではない、と本国アルゼンチンでかなりの批判を浴びました。ですが、彼は彼の信じる音楽を作りつづけ、高い評価を勝ち取ります。

素朴で伝統的なショーロの要素を多分に含む作品を経て「ヴィラ=ロボスが創造したショーロ」に至る《ショーロス》も、作曲家の個性の強さが感じられる作品群です。
自分が影響を受けた音楽を自身の音楽で探り、新たな境地への到達を目指す・・・それはいつの時代も変わらない作曲家の大志のひとつなのかもしれません。




参考 in YouTube
下線のある行をクリックしてください。

①Dobrados
音源見付からず


② Suíte Popular Brasileira
by Turíbio Santos (Guitar)
1. Mazurka - Choro (1908)
2. Schottish - Choro (1908)
3. Valsa - Choro (1912)
4. Gavota - Choro (1912)
5. Chorinho (1923)


③ Quinteto em Forma de Choros
パート1
パート2
by Vitor Diniz (Flute), Georgi Kalandarischwili (Oboe), Ingo Goritzki (English Horn),
Stefan Jank (Clarinet),Eduardo Calzada (Bassoon)

④ Bachianas Brasileiras No6 アリア
for Flute & Fagote
Aria (Chôro): Largo
Flute: Arley Raiol Rodrigues
Fagote: Osvanilson Castro

⑤ Choros No.10
パート1
パート2
by Maestro Eleazar de Carvalho
Orquestra Sinfônica do Estado de São Paulo
Coral Acasp (Associação Coral Adventista de São Paulo)


番外
Historia du Tango (タンゴの歴史)
Astor Piazzolla

Bordel 1900
Isabelle Héroux (Guitar), Patrick Healey (Flute)
Café 1930
Javier Albarés (Cello), Marisa Gómez (Guitar)
Nightclub 1960
Isabelle Héroux (Guitar), Patrick Healey (Flute)
Concert d'aujourd'hui
Isabelle Héroux (Guitar), Patrick Healey (Flute)

2012 05 05

Villa-Lobos

May 14 2012

注:記事内の写真はインターネット上、ダウンロードできるものを添付しました。