連載 エッセイ ヴィラ=ロボス

<文 宇野智子>


(6) ヴィラ=ロボスの楽譜 in IMSLP【後編】 1/2



piano


今回は予告通り、IMSLPのアーカイブに保存されている、閲覧が可能なヴィラ=ロボスの楽曲について解説していきたいと思います(2012年8月現在)。IMSLPについては前回の記事をご参照下さい。

曲集や組曲のタイトルは《 》、その中に含まれている小曲は〈 〉で示しています。



ピアノ作品



《子どもの組曲 第2集(Suíte infantil No2)》 1913年
三つの曲から成っていますが、これらには速度記号以外のタイトルは付けられていません。ピアニストの宮崎幸夫さんはカワイ出版から楽譜(末尾記載の参考文献をご参照下さい)を出版する際、日本向けにかわいらしい副題をそれぞれに付しました。
なかでも2曲目に冠された〈風に揺れる花〉という副題は、そよぐ風に優しく吹かれる花の様子が目に浮かぶような、とても素敵なタイトルだと思います。

《波に揺れて(Ondulando)》 1914年
これには練習曲(ESTUDO)との但し書きがあります。右手は、小指で弾く高音がメロディになっているので、この音を保ちながら、他の指で16分音符を動かさなくてはなりません。テンポはそれほど速くありませんが、練習曲としては比較的大きな曲で、指の筋力が鍛えられそうな気がします。

《アフリカ的性格の舞曲(Danças características africanas)》 1914 - 1915年
リズムが16分音符でずっと刻まれ続けます。3曲からなる組曲ですが、1曲目は音の高低で、2曲目はスラー、3曲目はアクセントで、それぞれリズムを作り出しています。

《花の組曲(Suíte floral)》 1916 - 1918年 
〈ハンモックに揺られて(Idílio Na Rêde)〉、〈いなか娘の歌(Uma Camponeza Cantadeira)〉、〈菜園のお祭り騒ぎ(Alegria Na Horta)〉の3曲で構成されています。三声構造により、ヴィラ=ロボスの特徴のひとつでもある美しいハーモニーがメロディの下から響いてきます。

《単純な様式による印象(Simples coletânea)》 1917 - 1919年
単純といっても、曲そのものは臨時記号、グリッサンド、三段譜もあれば変拍子もあり、となかなか複雑です。多くの方がいうように、ドビュッシーのようなフランスの印象派を思わせる、音がうつろいゆく様が美しい曲集です。

《赤ちゃんの一族 第1集(A prole do bebê No1)》 1918年
マックス・エシック社からの出版譜の他にも、ヴィラ=ロボスの研究者ディビッド・アップルビー(David Appleby)による校訂譜もあります。
何だか不思議なタイトルですが、赤ちゃんの身の回りのものを指しており、第1集は陶器のお人形、ゴムの人形などの副題が付いています。ちなみに第2集は、紙のかぶとむしや、モスリンのねずみなど、副題におもちゃの名前が付けられています。

《おとぎ話(Histórias da carochinha)》 1919年
各曲は、王子のご挨拶や王女のダンスなど宮廷でのおとぎ話そのもののタイトルが付けられています。
とはいっても、右手と左手の動き方にはちょっとひねった部分もあり、子どもでもすらすら弾ける、ひとくせある響きも見え隠れしています。

《子どもたちのカルナヴァル(Carnaval das crianças)》 1919 - 1920年
全8曲の曲集で、ヴィラ=ロボスの甥に捧げられています。
ピエロのポニーがパカッパカッと走るリズムから第1曲目が始まり、2曲目では小さな悪魔がムチをふるう音、第3曲目ではピエロが何やら企み中・・・と副題の通りに物語が続きます。全体的に明るくにぎやかな印象で、甥っ子に得意げに曲を紹介する様子が目に浮かぶようです。

《カボクロの伝説(A lenda do caboclo)》 1920年?
終始メランコリックなハーモニーで進行しますが、その中で高音に配された音の粒が美しく響きます。後に書かれた《ショーロス第5番》の「静」の部分の原型のようにも感じられます。
ギターの名手であるアサド兄弟が、この曲をアレンジして演奏したCD(文末をご参照下さい)もあり、そちらも大変叙情的で、美しいものです。 

《南アメリカ(Sul América)》 1925年
執拗な3連符と厚い和音で構成された曲です。それでも重苦しくならず、ぎりぎりのところで清浄さを感じることができるのは、ヴィラ=ロボス故でしょうか。華やかさはありませんが、広く重たく、音がのしかかってくるような迫力があります。

(後編続く)


IMSLP ヴィラ=ロボスのページ
※邦題は宮崎幸夫さんが校訂・監修したカワイ出版の
「ヴィラ=ロボス ピアノ曲集」に準じています。


2012 08 21

Villa-Lobos

編者注:記事内の写真はインターネット上、ダウンロードできるものを添付しました。