連載 エッセイ ヴィラ=ロボス



<文 宇野智子>




(7) ヴィラ=ロボスの楽譜 in IMSLP【後編】 2/2



Chamber Music




前回に引き続き、IMSLPのアーカイブに保存されている、閲覧が可能なヴィラ=ロボスの楽曲について解説していきたいと思います(2012年8月現在)。IMSLPについては第5回の記事をご参照下さい。

曲集や組曲のタイトルは《 》、その中に含まれている小曲は〈 〉で示しています。



ピアノ作品続き


《シランディーニャス/ブラジル民俗舞曲小曲集(Cirandinhas)》 1925年
12曲からなる小曲集。〈カーネーションはバラとけんかした(Zangou-se o Cravo com a Rosa)〉のようなリズミックなものと、〈この道のむこうに道がある(Nesta Rua Tem um Bosque)〉といった叙情的な作品が混在していますが、どれも面白いタイトルが付けられています。

《シランダス(Cirandas)》 1926年
シランダとは歌いながら輪になって踊る子どもの遊戯のことで、16の小曲が収められています。一部《シランディーニャス》と同タイトルが使われていますが、これはどちらもブラジルのわらべ歌を題材にしているためです。

《ショーロス第5番 ブラジルの魂(Choros No5 Alma Brasileira)》 1928年
本エッセイでも度々登場している《ショーロス》シリーズの第5作目。CDの音源も豊富で、ヴィラ=ロボスの代表作のひとつとなっています。叙情的な導入から一転して繰り広げられる、厚い和音で刻むリズムのパートは何度聴いても圧巻です。
右手で5つ、左手で6つ(親指で隣り合った二つの音を押さえます!)の和音を同時につかむところは、なるべく親指以外の指をペタッとと寝かせないよう頑張ると、リズムが浮き上がってくると思います。こちらの曲も、アサド兄弟によってアレンジされており、ご紹介したCDに収録されています。

CD:「ブラジルの魂〜エモーショナル」 アサド兄弟 1997年 WEAジャパン

《練習の手引き第2, 3集(Guia prático)》 1932年
※こちらは第5回の記事の訂正があります。《練習の手引き第2, 3, 6, 7, 9集(Guia prático)》が閲覧可能としましたが、正しくは《練習の手引き第2, 3集》のみでした。大変失礼致しました。その他の番号はIMSLPの審査待ちで、ファイルはありますがロックされて閲覧不可になっています。

この曲集は、ブラジルの民謡を再構成した作品を収めており、第11集まで刊行されています。これらは学校の音楽指導要領のひとつとして編纂されました。ヴィラ=ロボスの他の作品に引用されているものもありますが、この辺は勉強不足なので、すみずみまで精査してからいつか書きたいと思います。


室内楽作品


《小組曲(Pequena suíte)》チェロとピアノ 1913年
6楽章からなる作品ですが、ちょっとありきたりな感も否めません。(きれいな曲ではありますが)
1800年代後半の名も知らぬヨーロッパの作家の曲だ、と言われたら浅学な私は信じてしまうかもしれません。。。
ヴィラ=ロボスの作品は結構極端で、長調なのか短調なのか判然としないあのヴィラ=ロボス節でうまく構成している作品もあれば、平凡な響きしか感じられない習作のような作品もあります。音のセンスからいえば、彼の後を生きたニャタリの方が才能があったと誰もが感じることでしょう。

《黒鳥の歌(O canto do cisne negro)》ヴァイオリンもしくはチェロと、ピアノ 1917年?
彼の交響詩《クレオニコスの難破》から抜粋された曲で、日本でも大変人気があります。この曲もどちらかといえばシンプルで、ヴィラ=ロボスらしい?おおげさな部分はありませんが、優しい奥行きのある響きを生み出しています。
アップされている楽譜は途中で大きく曲がっていますが、トリオと異なり音数が少ないので、読譜に苦労することはないと思います。

《オーボエ、クラリネットとバソンのためのトリオ (Trio for Oboe, Clarinet and Bassoon)》 1921年
この曲は残念ながら、アップされている楽譜の状態があまり良くありません。これで演奏をしようと思ったら、注意深く楽譜を見なければならないでしょう。
二つの楽器が足並みをそろえ、そこにソロが流れる形で進行していきますが、三人が好き勝手におしゃべりしているようなユーモラスな印象も受けます。



かなり駆け足でしたが、いかがでしたでしょうか?
一口メモ程度のことしか書けませんでしたが、IMSLPがヴィラ=ロボスの音楽が、そしてブラジルの音楽がもっと日本に広がっていくきっかけになったら良いですね。




IMSLP ヴィラ=ロボスのページ
※邦題は宮崎幸夫さんが校訂・監修したカワイ出版の
「ヴィラ=ロボス ピアノ曲集」に準じています。


Villa-Lobos


編者注:記事内の写真はインターネット上、ダウンロードできるものを添付しました。