連載 エッセイ ヴィラ=ロボス



<文 宇野智子>


(9) 昭和17年のヴィラ=ロボス 前編




このエッセイの第1回目に、日本で最初にヴィラ=ロボスについて書かれた本を取り上げました。(→エッセイ第1回
つい先日、この他にもヴィラ=ロボスが紹介されている書籍を見つけたので、ご紹介したいと思います。
 
本のタイトルは『現代作曲家群像』で、出版は昭和17(1942)年。なんと第二次世界大戦の真っ只中です。映画「カサブランカ」が製作されたのと同じ年ですね。
戦時中の出版物ということで、紹介されているのは「敵性國家米英」出身の作曲家を除く、当時の若手音楽家達です。
前書きには、<現代作曲家の人名辭典(辞典)とも云ふべきダヴィッド・エウェンの「今日の作曲家」にもとづき世界各国の著名な作曲家を列記した>とありますので、日本で研究された独自の見解というよりは、抜粋翻訳書といった趣きの読み物だったのでしょう。

ブラジル出身の作曲家として紹介されているのはヴィラ=ロボス一人ですが、これはヴィラ=ロボスがブラジルで当時最も優れていたというわけではなく、パリに滞在していた時の自己PRが功を奏したものと思われます。
参考文献として挙げられているのは、パリの音楽批評雑誌に投稿されたヴィラ=ロボスの音楽に関する2本の記事のみです。
出版当時に、ヴィラ=ロボスのレコードが日本に存在したという確率は極めて低いので、著者たちはおそらく彼の音楽をほとんど耳にすることがないまま、執筆したのではないでしょうか。
気になる中身は来月のお楽しみという事にして、今回は、掲載されている作曲家達のちょっと面白い肖像画をご覧頂きたいと思います。

ショスタコーヴィチ(右)とストラヴィンスキー(左)

 
こちらは、ショスタコーヴィチ(右)とストラヴィンスキー(左)、二人のロシアの巨匠が向き合っています。目線が合っているので、ちょっと睨み合っているように見えなくもありません。ストラヴィンスキーの方はまぁ似ていると思うのですが、ショスタコーヴィチは、シューベルトか滝廉太郎のような・・・。

プロコフィエフ





どなたが描いたのかは分かりませんが、交響的物語《ピーターと狼》でおなじみのプロコフィエフはかなり本人の特徴をとらえているのではないでしょうか?


ヴィラ=ロボス



そして、我らがヴィラ=ロボスの肖像はこちらです。
髪型や顔の輪郭が、当時残されていた写真とは少し異なる印象を受けますが、どこかの資料で見たような気もします。
彼は自他共に認めるハンサム・ガイで、写真はかなり多く残されています。大物になってからの風刺画などを含めてイラストもかなりあるので、この肖像画の出所が判明したらまた追加記事を書きたいと思います。
(他の書籍でお見かけになった方がいらしたら、ぜひご教示下さい。)



尚、この11月19〜25日、リオ・デ・ジャネイロで第50回ヴィラ=ロボス・フェスティバルが開催されます。
私はまだ足を運んだことがないのですが、次回開催時にはレポートできるようにしたいものです。

このエッセイも、ヴィラ=ロボスの足取りをたどりながら地道にコツコツ積み上げていこうと思います。充実している回、そうでない回とばらつきはありますが、これからもよろしくおつき合い下さいませ。





ウィキペディア・紹介


参考文献「現代作曲家群像」 
発行年:昭和17年
著者:柿沼太郎
発行所:新興音樂出版社(東京)


2012 11 13

編者注:記事内の写真は著者より提供を受けました。