片山叔美のエッセイ (12)

私のサウダージ、アデミルジ・フォンセーカ


<文:片山叔美>




カーニバルをめぐる思い出

(マンゲイラの神)

SAMBODROMO RJ


2004年、私はちょうどカーニバルの時期のリオに滞在していた。

一般的に<サンバ・カーニバル>と呼ばれているのは、サンボドロモというパレードのできる巨大施設で開催されるカーニバル。白熱した戦いが見られるのはここだけど、身近に出演者がいる人以外は、「サンボドロモは人がいっぱいだからテレビで様子をみる」とか、「(観光客が多くなる)リオデジャネイロを脱出して旅行に出かける」とか、「カーニバルはそこに限らずあちこちでやってるよ」とか話しているのをよく聞いた。

で、アデミルジはというと、毎年のように、リオのCinelandia(シネランジア)という地区で行われるカーニバルイベントに出演していたようだ。

Cinelandia

そのイベントで共演するアデミルジの友人の歌手、マルシオもサンボドロモには行かないということで、彼の友人も交えて本番前のサンバチームの練習を見に行くことになった。
(さすがにアデミルジはお留守番。)

着いたのは体育館みたいな場所。
人、人、人でごったがえしている。
そこはマンゲイラ(※1)というチームの練習会場だった。
練習を見るだけでもけっこうな値段のチケットがいる。
マルシオが値段交渉をして、ダフ屋のような子供からチケットを購入した。
小学生くらいに見えるけど、その素振りに子供らしさはなく、正直、ちょっとコワイ。
きっと彼らも生活費を稼ぐのに必死なのだ。

※1 サンボドロモで行われるカーニバルに出演する代表的なサンバチーム。サンバチームのメンバーの多くはファヴェーラの住民。

館内に入るともう練習は始まっていて、すごい打楽器の音。
男性のヴォーカルも聞こえる。
しばらくして演奏が鳴り止み、お年寄りが一人、壁をつたいながらステージ脇の階段をヨタヨタと上っていく。今にも倒れそうだ。
「あれがジャメラゥン(※2)だよ!」とマルシオが言った。
ジャメラゥンがステージに立つと同時に、スルド(※3)を叩いていた人も入れ替わった。

※2 マンゲイラを率いていた偉大な男性歌手。2008年に逝去。(参考 ここをクリック)
※3 サンバの演奏のリズムの要ともいえる、太鼓のような打楽器 (参考 ここをクリック)

Mangueira



演奏が始まった。
さっきまでと明らかに印象が違う。
スルドのせいでリズムがもっと鋭くなったのだ。
ジャメラゥンお抱えのスルド奏者なのかな。

そしてジャメラゥンが歌いだす。
これが今しがた、やっとのことで階段を上ってきたお年寄りなのか!?
私はその声に神を感じた!

この2年後にジャメラゥンは音楽活動から退いたらしいので、これは貴重な体験だったなぁ。友人たちに感謝。
私が見たときの彼は数えてみれば90歳だ。
信じられない、やっぱ神だーーー!


この章続く

2013 11 15