片山叔美のエッセイ

「ブラジル浪漫暦話」

片山叔美 私はショーロを歌う


<文:片山叔美>




(3)一日限りのカーペット


6月、日本は梅雨の真っ只中。
一方、秋~冬の過ごしやすい季節を迎えているブラジルは楽しいイベントがいっぱいです。

中でも、私が実際に見たい、参加したい!と思うのはCorpus Christi(コルプス クリスチの日:直訳では「キリストの身体」日本では「聖体祭」)。
日にちは毎年変わりますが曜日は木曜と決まっていて、今年は6月19日です。

人々はこの日に備えて、日頃から材料を集め、着色などもしておきます。

コーヒーやお茶の出がらし
落ち葉
卵の殻
米のもみ殻
ペットボトルのキャップ
おがくず
飾っていた花をドライフラワーにしたもの…等々

Corpus Christi

基本的に、使い終わった物か、「わー、もったいない!」と思わないような物に限ります。
食糧になりうるものは(種子なども含めて)殆ど使わないとのこと。

さあ、集めたこれらで何をするのか???

事前に決めたデザインに従って、道路の地面をカーペットを敷くように飾っていくのです。
この長い「カーペット」は、家単位とか、学校単位でそれぞれ担当する場所を決め、計画的に作成されます。

あるブラジル人がこんな風に話してくれました。

…私の町では小さい教会から大きい教会までの、歩いておよそ1時間くらいの道を全て埋め尽くしました。
通常、その道沿いに住んでいる人がするのですが、これはカトリックの伝統行事ですからプロテスタントや他の宗教の人は参加しません。だからその家の前は、カトリック教徒の誰か担当します。

Corpus Christi

また、民家のない道路などは学校に任され、生徒に持ち場を割り振って、とにかく地区のカトリック教徒全員で協力して絶対に装飾が途切れないように完成させるのです。

当日はみんな早起きをします。
4時とかが普通。
でないと、儀式に間に合わないのです。

みんな道路にしゃがみ込んで、自分の担当場所に色とりどりの材料を綺麗に敷きつめていきます。
7時頃には仕上げてしまって、教会へ向かいます。
そこで1時間くらいのミサを終えると、教会の司教、司祭、幾人かの教徒の代表がゆっくりと行進を始めます。

Corpus Christi

早朝からみんなで作った「カーペット」の上をゆっくりゆっくり祈りを込めて歩いていくのです。
カトリック教徒たちはその行列の横や後ろについて、一緒に歩きます。一生懸命作り上げた「カーペット」はもちろん崩れていきます。
そうして行進の列がもう一つの教会に到着すると、再びミサを行います。
そのミサの後、すっかり崩れてしまった装飾を全員で片付けるのです。
元どおりの道になったら、この行事は終わりです…

カトリック教徒の行事とはいえ、とても綺麗なものですから、宗教とは無関係にこの光景を楽しむ人も多いそうです。

宗教的な意味に加え、毎年みんなで協力して装飾を完成させることに人々は意義を感じているようです。
だからこそ、ずっとこの行事は続いているんですね。

サント・アントニオ

6月というと、12日のDia dos Namorados(恋人の日)も気になります。
サント・アントニオの日(6月13日)の前祝い的な意味もあり、6月12日はいわばブラジル版バレンタインデー。
というのもサント・アントニオは良い結婚をもたらしてくれるとされているから。独身の女性はこの聖人の人形をクローゼットの奥などに逆さにして隠しておくそうです。そして見事良いパートナーに出会えたら、ちゃんと立たせて見える所に飾るんだとか。
むむ…誰か、私にサント・アントニオの人形を下さい!!

festa junina

もう一つ、Festa Junina(6月祭)も大切な行事です。サント・アントニオも含め、サン・ペドロ、サン・ジョアンなどの聖人たちの記念日や、収穫祭などが色々混合しているらしく、昔の農民のようなコスチュームをまとって田舎風の音楽と踊りをすることから、やはり収穫に感謝するお祭りなのでしょう。だいたい6月~7月の間に、町や学校単位で日を決めて行うそうです。
グーグルで「festa junina」と画像検索してみて下さい。楽しそうな雰囲気が分かりますよ。

今やワールドカップ一色(!)のブラジルですが、もしかしたらこういったお祭りの様子も日本のテレビで紹介されるかも知れませんね。


2014 06 14