片山叔美のエッセイ

「ブラジル浪漫暦話」

<文:片山叔美>




(6)「春はイペの花と共に」

Ipê Amarelo

毎年9月になると、独立記念日(7日)を祝うかのように「イペ(Ipê)」という大きな木にいっぱいの花が咲き乱れます。ブラジル人はそれを見ると、春がやってきたなぁ!と感じるそうで、日本人にとっての桜にあたる花と言えるでしょう。

花の色は主に黄色(白や紫もあるとか)で、桜よりはずっと大ぶり。ハチドリ(Beija-Flor)がやってきて蜜を吸う光景があちこちで見られるそうです。
ハチドリはとても小さい鳥ですが嘴が長く、羽根の動きがすごく速い。
1度だけ、アデミルジのアパルタメントの植栽で、蜜を吸っているのを見たことがあります。
可愛かったなぁ…。

イペが「ブラジルの桜(※)」と言われているなら、
「お花見をする習慣はあるの?イペの花の下でお弁当というのはさすがにないだろうけど…バーベキュー(シュラスコ)とかしないの?」と訊ねてみたところ、
「イペの木はどこにでも生えていて珍しいものでもないし、春だなぁと思うだけで特に木の下では何もしない」とのこと。

Ipê Roxo

ブラジルはそれほど寒い冬の期間があるわけでもないので、春が来たという感動は日本のほうが勝るのかも。
何より、あの桜の花の散り方といったら、なんとも儚く、愛おしく…その姿が日本人の心を打ち、短い花の時期を精一杯楽しもうという気持ちにさせるのでしょう。

さらに、ブラジル人曰く、

「ブラジルはいつも楽しく騒ぐことが沢山あるからお花見はあまり必要でないかな」

なるほど。言われてみれば、誕生日パーティだの、○○〇祭りだの、町の行事、教会の行事…etc.
確かに人々が集まって騒ぐ機会は日本より多そうです。

イペとは先住民インディオの言葉で「皮が厚い木」という意味があり、幹は日本の松の木に似ています。
桜と同じように、花が咲くときは葉っぱがありません。冬に葉っぱは全部下に落ちてしまいます。
花びらの感触は「まるでバターみたい」だそうですが…わかりません、一体どんな…?
とにかく滑らかではあるようです。
イペは木材としても人気が高く、特に紫色の花をつけるイペは先住民が薬として使用してきた歴史もあり、現在では免疫力を高める健康食品としても扱われているそうです。

へぇ~、なんて感心していたら、イペは近年になって、ずいぶん減ってしまったというのです。
というのも、木材として優れていることに加え、町に電線が増えたために、高木のイペは邪魔になって切られてしまったという世界中でありがちな理由…。

やはり人間の都合による伐採で、それは他の木でも同様。ブラジルの木が減るということは非常に重大で地球レベルの問題にもなっています。
あるブラジル人が
「ブラジルのアマゾンには誰も大きな爆弾は落とさない。アマゾンを破壊したら、酸素がなくなるから」と言っていました。

そんなブラジルにはちゃんとありました! 
9月21日は「木の日/Dia da Árvore/ヂーア・ダ・アルヴォリ」なのです。

木は木材や紙になるばかりでなく、時にはイペみたいに花を咲かせて私たちの目を楽しませ、優しい木陰も作ってくれる。フルーツだって与えてくれるし、煎じれば薬にもなる。
そもそも水を地下に溜め込んでくれる上に、張り巡らせた根で土壌を押えてくれている。
私たちはそんな木のお蔭で生きているのだ。
人間をこんなにも助けてくれる木をもっと大切にしようじゃないか!
ということで、9月21日は学校の行事で子供たちが町に植林をしたり、高速道路の出口などで「これをどこかに植えてください」と苗木を渡したりすることもあるそうです。

この「木の日」、人間ひとりひとりが自然への関心・意識を高めるために、世界共通の記念日にしても良いのではないでしょうか。

おまけ:その他、気になった9月の記念日



9月27日は、「歌手の日/Dia do Cantor/ヂーア・ド・カントール」
6月13日も「歌手の日」ですが、1日では足りずもう1日増えた(?)
歌手は歌詞とメロディによって私たちに多くの感動を与えてくれる。
大切な記憶、懐かしい人や場所を思い起こさせてくれたりする。
これは誰にでも出来ることではなく、才能がなければ不可能なことだ。
そんな歌手たちを讃える日が1年に2回あっても良いではないか!…ということだそうで。
おー、素晴らしい。自分もそんな風に祝ってもらえる歌手になりたいものです。



※ 2008年、神戸市はブラジル移民100周年を記念してイペの木を植樹しました。これがイペと桜のイメージをより近づけたのかもしれません。
東京で花を見ることは難しいイペですが、ウッドデッキなどの建築材に姿を変えて、結構私たちの目に触れているようです。


2014年9月17日
写真はインターネットより